ホテルや機内で履けば、蒸れ知らずで快適。
デザイン&プロダクツ
2020.04.02

素材は段ボール! エコでアートな紙鞋

文=清水千佳子

軽くて通気性がよく、100%再利用できるエコな素材。そんな優れた特徴を持つ段ボールで作られた世界初の履物が、紙鞋(かみわらじ)だ。草鞋(わらじ)とは稲藁(いねわら)を編んで作る日本古来のサンダルで、かつては旅の必需品。その伝統ある草鞋を紙の一種である段ボールで作り、美しい絵を印刷することで、アートとしても楽しめる傑作が誕生した。


紙鞋誕生の地は緑豊かな東京・羽根木。制作会社の名にちなんだペンギンのオブジェとともに撮影(紙鞋は屋内用)。

考案者で、ブランドマーケティングの分野で活躍する渡辺雅之氏は、制作の経緯をこう話す。「きっかけは、2014年に観光庁の仕事で、私たちの会社、ペンギン株式会社が訪日促進を目的とした日本のブランディングを担当したことです。インバウンドのかたがた約400人と接する機会があり、彼らが日本の文化や商品をことごとく『クール!』『キュート』と称賛してくれることに感激しました。そんなみなさんに最高の日本土産をと思い、考え出したのが紙鞋です」。

この斬新なアイディアを形にしたのは、東京の下町、江戸川区の箱製造会社。段ボールの履物作りは当然初めてだったが、渡辺さんの要望に応えて試作を重ね、強度や履き心地を改良。桜や錦鯉など日本らしい絵柄は、発色がよく、繊細な表現が可能なシルクスクリーンで印刷した。


(左から)葉の文様:日本の伝統文様をベースにしたオリジナルの葉の文様。錦鯉:観賞用として世界で人気の錦鯉は、日本で立身出世の象徴とされる鯉の一種。波紋:紅葉と波紋の風情ある組み合わせ。木目:木目を全面にデザインしたユニークな作。さくら:日本人が愛してやまないさくらを優美に表現。

完成した紙鞋は、渡辺さんも驚くほどの反響を呼ぶ。東京都内で外国人200人を対象にサンプリングしたところ、全員が大絶賛。見本品を目にした複数の企業からオリジナルデザインでの注文が舞い込み、会社は大忙しに。「嬉しい反面、土産品としての展開が遅れ、現在、販売している店は大阪城そばの土産物店『大阪城本陣』のみ。この春から本格的に販売していきます」と渡辺さん。興味のある方はぜひ、ウェブサイトで最新情報をチェックしてみよう。


ペンギン株式会社のコミュニケーションデザイナー兼クリエイティブディレクターの渡辺雅之氏。伝統とエコ、アートを融合させた紙鞋を考案した。

 

紙鞋(ペンギン株式会社プロデュース)
kamiwaraji.jp
※サイズはS(22.5~24cm)、M(24.5~26cm)、L(26.5~28cm)の3段階で展開(サイズには多少の誤差がある可能性があります)。
各3000円。

大阪城「本陣」
大阪府大阪市中央区大阪城1-1 ミライザ大阪城1階
Tel. 06-6755-4314
9時~17時30分
miraiza.jp

<この記事は家庭画報国際版2020年春夏号より抜粋。>