- 食
- 2020.01.21
九州の食と工芸から生まれたモダンキュイジーヌイベント
ラーメンからもつ鍋、新鮮な魚介料理まで、グルメな街として知られる福岡市。そんな美食の街で、二日限りの特別なランチイベントが行われた。会の主催者は海外向けの服飾ブランド「Black Ships」の代表、安井 邦仁氏。彼の「地元、九州を活気づけたい」、「埋れた才能を発掘したい」という思いから開催されたこのイベントには、40歳以下の才能あるシェフやパティシエ、バーテンダー等が集結。有田焼の窯元を筆頭に家具や博多織などの九州の伝統産業メーカーやフランスを代表する老舗ブランドの協力を得て実現した。イベントテーマは日本とフランスの「伝統を支える情熱の赤」。
「衣食住は決して切り離せないものです」と話す安井氏は、自らの専門であるファッションの見地から食や空間をプロデュースしている。その代表例が、今回のイベントテーマに沿ってデザインされた有田焼の器だろう。2色の赤を使い分けて作られた皿には、ストーリーが詰まっていた。
日仏、2つの文化が織りなす特別なテーブル
日本とフランスの国旗にはどちらも赤が使われているが、それぞれの色味はまったく異なるという。日本の赤は、伝統色とも言われる神社の鳥居などに使用されている朱赤、一方フランスの赤は革命時に流れた血の色を表す鮮やかな赤。それぞれが交わる皿の中央は、朱赤の原料であった水銀と、フランスの栄華を象徴する銀色で交わっている。ファッションデザイナーらしいユニークな発想とセンスを感じる器は、有田焼の新境地を切り開く予感がする。
しかし今回のイベントの見所は、器だけではない。この会のために集結した若手のフードクリエイターたちが「地産地消」をキーワードに作り上げた、九州の食材をふんだんに使用した9品の料理と12種のペアリングドリンクのコースは実に驚きの連続だった。5年間フランスのパリと南仏のミシュラン星付きレストランで修行し、現在は福岡市のビストロ「Galinette」のオーナーを務める山口義紀シェフが、厳選された食材に合わせ腕をふるった料理は、まさに九州の食材を活かしたものばかり。
宮崎県産の濃厚なカラスミをのせたブルスケッタにはじまり、低温調理された対馬産の鯖ミキュイや、ポルチーニ茸と豚足のラビオリソースを添えたウチワ海老のカダイフ揚げが続く。そして、メインのお肉料理には、地元の最高級水準のブランド牛・伊万里牛フィレのシューファルシーが。ふんわりとした滑らかな食感で、肉汁がジュワっとあふれるこのお肉には、なんと同じ伊万里市で作られた古伊万里酒造の純米大吟醸を使用したトリュフソースが合わせてある。「日本人はお肉をお米と一緒に食べるでしょ?」と話すシェフの言葉の通り、その相性は抜群。
そして最後は、ピエール・エルメなど著名なパティシエのもとで研鑽を積んだ納富氏が作る目にも楽しい華やかなデザートで締めくくる。福岡県八女市星野村の茶葉をオリジナルブレンドし、うまみを凝縮させた抹茶のクリームと煎茶のムース。これに、ゲストの目の前で大胆にゆずのスモークをかけ、燻製して仕上げる。もう満腹だと思っても、ふんわりと香る爽やかな柚子が食欲をかき立てるから不思議だ。
伝統を支える若手クリエイターの今後の活躍に期待
安井氏をはじめ、九州の伝統産業を支える人々の熱い思いによりうまれた夢のような料理と空間。そこにいた誰もが九州の魅力を再発見したことだろう。「九州のように、地域の良さを伝えきれていない地方の手助けがしたい。とにかくワクワクするものを作りたいんです」と話す安井氏。彼の今後の活動にも目がはなせない。
TEAM FRONTIER BY Black Ships
次回開催は11月頃を予定。
お問い合わせは以下窓口まで。
online@blackships.co.jp
アリタポーセリンラボ×Black Ships オリジナルプレート
正方皿(大) Passion Red 34000円
平皿(大)マリーアントワネットの部屋 36000円
※3月まで50セット限定発売
www.blackships.co.jp/shop
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