2020.04.20

半世紀続く安心安全の日本酒造り
―木戸泉酒造

東京から車で1時間ほどの千葉県南東部の港町で、1879年から酒造りを続ける「木戸泉酒造」。防腐剤を使用した酒が主流であった戦後、先々代が「安心安全な日本酒を造りたい」と余分なものを添加しない自然醸造をいち早くとり入れた酒蔵だ。現在は孫の五代目・荘司勇人社長が「旨き良き酒」の伝統を受け継ぎ、4人の蔵人と1人のアメリカ人がそれを支えている。


左:甑(こしき)と呼ばれる巨大な機械で蒸された米を、作業台に移すところ。甑は2層式で、この日は、麹米と掛米(かけまい)用の米が蒸されていた。右:蒸し上がった1層目の米に種麹をふりかけ、均一になるよう素早くかき混ぜる様子。その後徹底した温度管理のもと、約2日間かけて麹米となる。

「この蔵では、先々代の時代に独自に開発した高温山廃(こうおんやまはい)仕込みという、蔵棲みの乳酸菌を使用して高温で酒母を仕込む方法を採用しています。まず酒のもととなる酒母を、蒸し米と麹米、高温の仕込み水を混ぜ合わせ、糖化に最適な55度前後で仕込みます。温度と乳酸発酵で得た乳酸で雑菌が死滅するため添加物は必要ありません」と荘司社長は話す。


2層目の米は掛米として、仕込みタンクに運び、酒母と麹米、高温の仕込み水とともに発酵させる。それが醪(もろみ)となり、アルコール発酵し、ぶくぶくと泡が立つように。

「乳酸菌はすべて自家培養した天然のもので、シーズンはじめのみ酒母の仕込みの過程で添加します。その後は蔵に棲み付いた菌が自然と働いてくれるので添加の必要はありません」。そう熱心に説明してくれるのは、蔵人を経験し、今は広報を務めるジャスティン・ポッツさん。「日本酒本来の自然発酵から生まれる独特な酸味や奥深さが加わり、それが西洋料理にもよく合うんです。外国人の方や日本酒が苦手な方でも飲みやすいお酒で、僕と妻はここの日本酒のファンになり、千葉までやってきました」と笑う。


左から熟成20〜30年の上質な原酒をブレンドした古酒「古今」。自然栽培された青森の米「華吹雪」を使用した爽やかな酸味のある新酒。稀有な一段仕込みで造られているため、より日本酒感が強い「afs」。

自然派のお酒が注目を集め「ビオ日本酒」という言葉まで生まれた昨今。社長は「ようやく時代が追いついてきました。僕たちはこれからも昔からの方法で、旨くて安心な酒を造り続けるだけです」と淀みなく言う。


日本酒の貯蔵タンクの前に立つ荘司社長とポッツさん。

 

木戸泉酒造
千葉県いすみ市大原7635-1
Tel. 0470-62-0013
www.kidoizumi.jp

<この記事は家庭画報国際版2020年春夏号より抜粋。>