2021.01.01

美食列島NIPPON―1

文協力=柴田さなえ

南北に長く、海に山、川に里と、多様な自然環境に恵まれた日本の国土は、豊富な農林水産資源を育んでいる。資源に磨きをかけ地域ブランドにまで発展した食材に、地元の人々の丁寧な手仕事により継承される伝統食材まで、日本が誇る食材をご紹介しよう。

 

伊勢海老―三重県
三重県の志摩半島沖で多く水揚げされる伊勢海老は、真っ赤な鎧をまとったような威風堂々たる姿から、伊勢の神様へのお供え物とされてきた。また生命力が強く、籾殻に入れても数日間は生きるため、高級なお歳暮品としても知られる。


水揚げ量が一番多い志摩町和具では、伊勢海老が多く生息する沖合3キロほどの岩礁地帯に刺し網を仕掛けて、漁をする。

しかし、志摩でとれる海老に、なぜ伊勢の冠がついたのか。その由来は江戸時代にまでさかのぼる。古い資料には、志摩でとれた海老を、隣接する伊勢の国の商人たちが都・京都で売ったことで、この名前が付いたと記されている。当時、地域の名前を付け親しまれる食材は珍しく、伊勢海老はブランド食材のはしりであった。

ぷりっと引き締まった立派な身から溢れ出る濃厚な甘みを味わえば、江戸時代から長く愛される理由がわかる。

[Part2へ続く]

 

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