2021.01.02

美食列島NIPPON―2

撮影=中倉壮志朗
文協力=北森裕介

南北に長く、海に山、川に里と、多様な自然環境に恵まれた日本の国土は、豊富な農林水産資源を育んでいる。資源に磨きをかけ地域ブランドにまで発展した食材に、地元の人々の丁寧な手仕事により継承される伝統食材まで、日本が誇る食材をご紹介しよう。

[Part 1から続く]

 

有明のり―佐賀県
日本各地には、地元の人々の地道な努力と工夫により受け継がれる食材がある。昔ながらの方法で手間ひまをかけて作られた食材には、大量生産にはない個性的な旨みや豊富な栄養素、作り手のこだわりが詰まっているのだ。


朝焼けの中、収穫に向かうのり漁師たち。

佐賀県南部の有明海ののりもそのひとつ。のり師の島内啓次(しまうち・けいじ)さんは、父親から引き継いだ「支柱柵式」と呼ばれる昔ながらの漁法を守り続けている。支柱に張られた網にのりの種を付け、日本最大の干潟を有する有明海の潮の満ち引きを活用し、海中の養分と日光の恵みを交互に吸収させながら育成する養殖法だ。時間を要するが、この方法だと旨み成分であるアミノ酸の含有率が高くなる。


最大で約6メートルもある干満の差を利用して養殖する。のりの芽が15〜20センチになったら収穫。時期は、11月から翌4月の間で2度行う。

さらに島内さんは、のりへの強いこだわりから種の培養も独自に行い、「父親ののりの再現を目指す」と話す。有明海の自然の恵みとともに伝承されたのり作りを今後も、守り続けてほしい。


摘み取ったのりは機械で四角形に漉き、乾燥させてできあがる。

 

島内啓次の海苔
binchoutan.com/shimauchi.html

[Part3へ続く]

 

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