若松葉がにのしゃぶしゃぶ。半生で、その旨みを味わうのがおすすめ。
2021.01.05

美食列島NIPPON―3

撮影=三木匡宏
文協力=柴田さなえ

南北に長く、海に山、川に里と、多様な自然環境に恵まれた日本の国土は、豊富な農林水産資源を育んでいる。資源に磨きをかけ地域ブランドにまで発展した食材に、地元の人々の丁寧な手仕事により継承される伝統食材まで、日本が誇る食材をご紹介しよう。

[Part 2から続く]

 

松葉がに―鳥取県
山陰地方を代表する冬の味覚といえば、松葉がにだろう。ずわいがにの雄が成長したもので、その姿形が松葉に似ていたことが、名前の由来だという。


水揚げされたばかりの若松葉がに。中が透けて見えるほどに甲羅や殻が薄く、見た目だけでその柔らかさがわかる。

松葉がにの漁が解禁になる11月になると、漁師たちは寒さが厳しい、荒波の日本海へと出港する。鳥取県の岩美網代港では、量よりも質にこだわるため、1回の出船期間は2日間と短い。帰港後、獲れたての松葉がにを水揚げし、その3時間後に競りを始めるため、鮮度抜群なものが売買される。さらに貴重なのが、前年8月に脱皮した「若松葉がに」だ。肉はしっかり詰まっていながら柔らかさも併せ持つ逸品。


鮮度を守ることを優先し、帰船後すぐに水揚げがされる。

漁獲量が水産資源を上回ることのないよう、定められた短い漁期にしか市場に出回らない松葉がには、まさに日本海の宝だ。

 

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