富士山を望む箱根西麓三島の地に広がるフードカルチャー・ルネサンスの農園。5haの範囲に点在する畑のひとつで、冬場の寒おこしをする代表の鈴木達也さん(左)と農園スタッフの高橋日菜子さん(右)。
2020.10.13

元気になる安心のひと皿

文=平山亜紀

農業の革新が食文化を豊かに
オーガニック農業では有機肥料が使われるが、無農薬であることはもちろん牛糞や豚糞などの動物性堆肥さえ使わない農業方式は「自然栽培」と呼ばれ、近年、注目されている。

静岡県三島市で自然栽培を行う農園「フードカルチャー・ルネサンス」。代表の鈴木達也さんは、東京でIT関連会社のサラリーマンをしていたとき、担当した農業支援事業を通して、日本の農業の問題と将来性をともに感じた。自分でも農業をしたいという思いが高まって、家族とともに箱根西麓三島の中山間地に移り住む。農業は素人だったが、専門書で研究しながら実践を重ね、やがて、料理人からも注文がくるような美味しい野菜が作れるようになった。


左:豊潤な土壌で、色も味も濃い野菜が育つ。右:世界一大きい品種の大根、桜島大根はこれでもまだ生育途中の大きさ。

以前は動物性堆肥などの有機肥料を使用していたが、それらの肥料なしでも美味しい野菜ができることに気づいてからは、草を生育させ土にすき込む緑肥を活用した自然栽培に移行した。箱根西麓三島のこの地は、関東ローム層のミネラル豊富で保肥性・保水性に富む、良質で肥沃な赤土と、13世紀前半頃に箱根山から噴出したとされる、同じくミネラル豊富で水はけに優れた火山灰土から成る。そのような性質を併せ持つ土と、標高差のある地形が生む寒暖差と日照の差が、さまざまな品種を育むのに適している。自然栽培にとって非常に恵まれた環境だったのだ。


左:鮮やかなカーリー・ケールは透明感のある味わい。右:害虫対策になる植物を組み合わせることで、農薬や化学肥料を一切使わず土壌の性質と自然の恵みを活かして知的な農業を行う。

ここで栽培される旬の野菜は、日本古来の固定種・在来種からヨーロッパ原産の珍しい野菜まで年間300種を超える。野菜の味わいはそれぞれ個性が際立ち、味が濃く、食べた人を魅了する。朝採りでレストランや個人客に直送されるほか、県内の直営店舗にも並ぶ。とにかく鮮度を大切にしているため、店頭に並ぶまでの日数がかかる一般の青果流通には頼らない。

「野菜は、太陽や、大地と微生物など自然そのものが育ててくれます。我々の仕事は、科学的根拠を用いて微生物の営みを手助けすること」と鈴木さんは話す。大地の恵みと気鋭の農法で育まれる箱根西麓三島野菜が、日本の食卓に“美味しい”をもたらし、より豊かな食文化を育んでいる。

 

三島野菜をマルシェやデリで
フードカルチャー・ルネサンス直営の、旬の野菜と果物のマルシェ&デリカテッセン「72veggie」。同農園の野菜ほか、日本各地の産直野菜が彩り豊かに並ぶマルシェ。

その季節の野菜が堪能できる無添加のデリ。人気は3種のデリとご飯が選べる「4 box deli」864円(左)。西浦みかんジュース346円(右)。イートイン可。

 

72veggie ららぽーと沼津店
静岡県沼津市東椎路字東荒301-3 1F
Tel. 055-941-6510
マルシェ 10:00-21:00
デリ 11:00-21:00(LO 20:00)

フードカルチャー・ルネサンス
www.facebook.com/FoodCulture.R/

 

<この記事は家庭画報国際版2020年春夏号より抜粋。>