- ライフスタイル
- 2021.03.15
知られざる花の国
日本・高知県―3
撮影=大見謝星斗
日本の主な4島の中で最も小さい島、四国に位置する高知県。ここが今、ジャパンクオリティの「花」の生産地として、世界でじわじわと人気を高めつつある。花と暮らす文化が脈々と受け継がれてきた日本から、高知県に咲き誇る生命力をフィーチャーする。
未来へつなぐ花
5分という短い時間のなか、高校生たちが真剣な表情で、大きな枝や竹、鮮やかな花を全体のバランスを見ながら勢いよく生けていく。そして制限時間を迎える頃には、彼女たちの身長をはるかに超える立派な生け花作品ができあがっているのだ。華道の流派にとらわれない、自由な即興の花生けで競い合う熱き戦い。それが「全国高校生花いけバトル」だ。
11月中旬、切り花の一大産地、高知県高知市で花いけバトルの地区予選「四国大会」が行われた。県内では初めての開催だったが、テッポウユリやトルコギキョウなどたくさんの地元の花が並ぶ会場は、地区大会のなかでは最多の44名もの出場者によって熱気に包まれていた。
2人1組のチームを組み、予選は3チーム、準決勝、決勝は2チームが同時に花を生けて競うこの大会。作品の構成や所作、チームワークなどさまざまな視点から審査され、得点がつけられる。そして予選、準決勝、決勝を勝ち抜いた1チームだけが、全国大会へ進むことができるのだ。
会場を盛り上げるポップなBGMと司会者の実況とともに、バトルは進行する。大会を主催する花いけジャパンプロジェクトの代表・日向雄一郎(ひなた・ゆういちろう)さんの言葉の通り、それはまさしく「生け花の堅苦しいイメージを覆す、現代的で自由な花の大会」だった。出場者は5分の制限時間の間、会場内を激しく走り回りながら花材を集め、与えられた花器に合わせた思い思いの作品を手際よく作っていく。その様子は、まるでスポーツ競技のようにも見える。
開催地、高知からの出場者は、生け花の経験が浅い学生が多く、ときおり不安そうな表情を見せていた。だが他県の強豪チーム相手に互角の戦いをし、準優勝に輝いたのは、なんと生け花を始めてまだ半年のペアだった。地元の花、グロリオサやダリアをポイントにうまく使いこなした彼女たちの作品のなかで、花も心なしか誇らしく輝いて見える。「半年前までは花とは無縁の生活でしたが、今は花いけに夢中です。これからもずっと何かしらの形で、花と関わっていきたい。」嬉しそうにそう話す彼女たちの未来の活躍が楽しみでならない。
高知に咲く花
切り花の生産が盛んな高知県の人気の花の種類をご紹介しよう。
オキシペタラム
高知の花といえば珍しい青色の花、オキシペタラムだろう。南は太平洋、北は山に面した温暖な芸西(げいせい)村のハウスで通年栽培されている。主に流通している品種は、淡い水色の丸みのある花びらが特徴のピュアブルー。サムシングブルーのひとつとして、ブライダルで人気のある花だが、現在はピンクや赤色の品種の開発にも取り組んでいる。
グロリオサ
燃える炎のような色と形が特徴のグロリオサの生産量は、高知県が第一位を誇る。写真は、生産者の努力により開発されたサザンウィンドと呼ばれる品種。赤色が鮮やかで美しく、茎が太く丈夫になるよう改良されている。日本の高級花として輸出され、海外でも人気が高い。1年を通してハウスで収穫が可能。
ダリア
形や色、大きさは品種により異なる。日持ちがせず家庭では扱いづらかったが、近年では改良された品種も誕生。収穫期は10月から翌年6月まで。
トルコギキョウ
品種により色や形はさまざま。平坦部の冬期温暖・多日照の気候が栽培に最適。併せて夏期冷涼な山間部でも生産されるため、通年流通する。
テッポウユリ
名前の通り細長い鉄砲のような形をした純白の花。高知では昭和初期から栽培が始まった。収穫時期は8月をのぞき、ほぼ通年。
エピデンドラム
小さな花が球状に固まって咲くのが特徴。色は、オレンジや赤、黄色、ピンクなどがあり、高知産は主に11~5月に出回っている。
高知県の情報はこちら
https://visitkochijapan.com/en
高知県の花についてのお問い合わせ
160701@ken.pref.kochi.lg.jp
<この記事は家庭画報国際版2021年春夏号より抜粋。>
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