伝統
2020.07.10

きものの文様―12
【鴛鴦(おしどり)】夫婦の変わらぬ愛を象徴する吉祥文様

古来、日本のきものに施されてきた美しい「文様」。そこからは季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、時代ごとの社会のしきたりを読み解くことができる。夏にちなんだ文様を中心に、きものの装いで通年楽しめるものや格の高い文様まで、文様のいわれやコーディネート例を、毎週お届けする。

今週は、自然や動植物の縁起物を描いた吉祥文様を3種ご紹介しよう。

日本では仲のよい夫婦のことを、おしどり夫婦という。それと同じように、鴛鴦は仲睦(むつ)まじいことから、中国では夫婦の変わらぬ愛を象徴する鳥とされてきた。

日本でも吉祥文様として用いられ、とくに桃山時代から江戸時代の能装束や小袖に多く見られる。


鴛鴦文(えんおうもん)
鴛鴦(おしどり)は水辺の風景などとともに、一般的に番(つがい)で表現される。かつては雄がくちばしを開け、雌はくちばしを閉じている阿吽(あうん)の姿が主で、夫婦和合の姿ともいわれた。

現代は雌雄とも口を閉じている場合が多くなっている。伝統的な番で表現されるときは、フォーマルな場に用いる、礼装用のきものや帯に見られる。


波間に浮かぶ鴛鴦をにぎやかに表現した帯。鴛鴦の表情は一羽ずつ異なる。

 

【きものの装いにおすすめの季節】
通年

『格と季節がひと目でわかる――きものの文様』

監修者/藤井健三
世界文化社

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができる。きものや帯にはそれぞれ素材や文様によって格があり、着る場面に合わせて格を揃える必要がある。判断に迷う格と季節が表示され、コーディネート例も豊富に紹介している、見ているだけで楽しく役に立つ1冊。

※Amazonほか各ネット書店でのご購入はこちら。また、日本国内では全国どちらの書店からも送料無料で店頭お取り寄せが可能(一部お取り寄せが出来ない店舗もあり)。