kimono pattern
左から:網目文様、桧垣文様
伝統
2020.07.16

きものの文様―13
【割付(わりつけ)】同じ文様が連続するグラフィカルな美

古来、日本のきものに施されてきた美しい「文様」。そこからは季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、時代ごとの社会のしきたりを読み解くことができる。夏にちなんだ文様を中心に、きものの装いで通年楽しめるものや格の高い文様まで、文様のいわれやコーディネート例を、毎週お届けする。

今週は、連続性に宿る美しさを文様のなかに見つけていこう。

割付文様とは、文様を構成する方法のひとつ。同じ文様を上下左右に連続させ、規則的に繰り返して一定面積の中に割り付ける。単純な文様だが、一面に割り付けられたさまは美しく、きものや帯、白生地の地紋、帯揚げ、風呂敷、草履の鼻緒など、さまざまな和の意匠に使われている。


籠目の文様

今回ご紹介するのは、割付文様のなかでも伝統のある3種。ほかにも、Part 14でご紹介する麻の葉やPart 15の鱗(うろこ)、市松などがある。

籠目(かごめ)
竹などで編んだ籠の編み目をそのまま文様化したもの。もともとは武将たちが夏に着る帷子(かたびら)に用いられていた亀甲(きっこう)形を、のちに籠の目に見立てて籠目文というようになった。

江戸時代には籠目は鬼が嫌うという迷信があり、魔よけのために浴衣などに染められた。文様としては単独で用いるより、多くは動植物を添えて使われる。

【きものの装いにおすすめの季節】
夏、通年

 

kimono pattern

網目(あみめ)
魚や鳥をとる網の目を文様化したもの。連続するリズミカルな曲線が美しく、江戸時代になってから文様に用いられるようになった。網目は単独で用いられるほか、魚をあしらって大漁文として浴衣などにも染められた。また、網を打って一網打尽するようにとの願いを込めて、武将の紋にも使われまた。家紋には三つ網目、四つ網目などが図案化されている。

【きものの装いにおすすめの季節】
夏、通年

 


檜垣取りの中に江戸時代の小袖文様を入れ込んだ礼装用の袋帯。編み目を効果的に使った意匠。

檜垣(ひがき)
檜(ひのき)の枝を細く薄く削って網代(あじろ)組みに編んだ垣根を檜垣という。その編み目の形を文様化したものは、きものや帯の柄として好まれ、白生地の地紋にも用いられている。

【きものの装いにおすすめの季節】
通年

 

『格と季節がひと目でわかる――きものの文様』

監修者/藤井健三
世界文化社

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができる。きものや帯にはそれぞれ素材や文様によって格があり、着る場面に合わせて格を揃える必要がある。判断に迷う格と季節が表示され、コーディネート例も豊富に紹介している、見ているだけで楽しく役に立つ1冊。

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