kimono pattern
伝統
2020.07.16

きものの文様―14
【麻の葉(あさのは)】仏像装飾にも見られる歴史ある文様

古来、日本のきものに施されてきた美しい「文様」。そこからは季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、時代ごとの社会のしきたりを読み解くことができる。夏にちなんだ文様を中心に、きものの装いで通年楽しめるものや格の高い文様まで、文様のいわれやコーディネート例を、毎週お届けする。

今週は、連続性に宿る美しさを文様のなかに見つけていこう。


変わり織りの生地に麻の葉文様をアレンジして絞り染めした小紋。大きな麻の葉はところどころ線が途切れているが、それが柔らかさを出している。金魚の帯を合わせて夏のお出かけに。

麻の葉文様は、正六角形を基本とする割付(わりつけ)文様の一種。<割付文様の記事はこちら>。6個の三角形を組み合わせ、それを四方に繋ぎ合わせたもので、形が大麻の葉に似ていることから、この名がつけられたといわれる。文様そのものは古くからあり、平安時代の仏像にも截金(きりかね)技法による装飾が見られる。

>截金(きりかね)とは、金箔や銀箔を糸のように細く直線状に切ったものを、膠(にかわ)などで貼りつけて文様を表現する技法のこと。

江戸後期に歌舞伎役者の嵐璃寛(あらしりかん)が、舞台『妹背門松(いもせのかどまつ)』の中で娘役を演じた際、この文様を用いたことから、当時の女性たちの間で大流行となった。その娘の名前が「お染」だったことから、麻の葉文様が「お染形(そめがた)」と呼ばれて親しまれた。


麻の葉文
(あさのはもん)
麻の葉を前後左右に繋いだものは、麻の葉繋ぎとも呼ばれる。江戸の女性にはやった麻の葉文様は、やがて子どもの産着や下着に用いられるようになる。

麻が丈夫でまっすぐ育つことにあやかったもので、かつてはどの家庭でも、子どもが生まれると、女の子には赤、男の子には黄色か浅葱(あさぎ)色のきものを着せた。この習慣はなくなったが、きものや帯、長襦袢などには欠かせない伝統文様のひとつとなっている。

 

破れ麻の葉(やぶれあさのは)
麻の葉文様は基本をアレンジしたものが多く、破れ麻の葉はその代表。部分的に麻の葉の連続模様が途切れているのが特徴。

 

【きものの装いにおすすめの季節】
通年、夏

『格と季節がひと目でわかる――きものの文様』

監修者/藤井健三
世界文化社

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができる。きものや帯にはそれぞれ素材や文様によって格があり、着る場面に合わせて格を揃える必要がある。判断に迷う格と季節が表示され、コーディネート例も豊富に紹介している、見ているだけで楽しく役に立つ1冊。

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