Kimono patterns of morning glory
伝統
2020.08.03

きものの文様―19
【朝顔(あさがお)】一瞬の美しさに心動かされる日本ならではの感性

古来、日本のきものに施されてきた美しい「文様」。そこからは季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、時代ごとの社会のしきたりを読み解くことができる。夏にちなんだ文様を中心に、きものの装いで通年楽しめるものや格の高い文様まで、文様のいわれやコーディネート例を、毎週お届けする。

今週は、夏の草花と自然の文様をご紹介しよう。


朝顔の花を表し、葉と蔓を手書きした帯。朝顔の開花期は、7月~10月だが、きものでは7、8月の花として用いられる。

ヒルガオ科の一年草で、平安時代に中国から伝えられた朝顔は、もともとは薬用としてその種を下痢に用いたとされている。江戸時代になると、観賞用として盛んに作られるようになり、櫛(くし)や手ぬぐい、団扇(うちわ)、きものなどの文様としても登場する。

朝咲いてすぐにしぼんでしまう朝顔は、一朝一期の花だから美しいととるか、はかなさや無常を感じて忌避するかの違いだが、人によってとらえ方が異なる。


朝顔の花と葉を印象的に描いた染め帯。うっとうしい梅雨時に締めたいさわやかな意匠だ。

朝顔の文様は、何といってもラッパ状の花が開花したところと、単純な葉の形、細く長い蔓(つる)が印象的だ。季節感がはっきりしているため、主に浴衣の柄に使われるが、夏のきものや帯にも見られる。ほかのモチーフと組み合わせるより、単独で文様化されることが多いようだ。

 

【きものの装いにおすすめの季節】

 

『格と季節がひと目でわかる――きものの文様』

監修者/藤井健三
世界文化社

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができる。きものや帯にはそれぞれ素材や文様によって格があり、着る場面に合わせて格を揃える必要がある。判断に迷う格と季節が表示され、コーディネート例も豊富に紹介している、見ているだけで楽しく役に立つ1冊。

※Amazonほか各ネット書店でのご購入はこちら。また、日本国内では全国どちらの書店からも送料無料で店頭お取り寄せが可能(一部お取り寄せが出来ない店舗もあり)。