- 伝統
- 2020.08.03
きものの文様―19
【朝顔(あさがお)】一瞬の美しさに心動かされる日本ならではの感性
古来、日本のきものに施されてきた美しい「文様」。そこからは季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、時代ごとの社会のしきたりを読み解くことができる。夏にちなんだ文様を中心に、きものの装いで通年楽しめるものや格の高い文様まで、文様のいわれやコーディネート例を、毎週お届けする。
今週は、夏の草花と自然の文様をご紹介しよう。
ヒルガオ科の一年草で、平安時代に中国から伝えられた朝顔は、もともとは薬用としてその種を下痢に用いたとされている。江戸時代になると、観賞用として盛んに作られるようになり、櫛(くし)や手ぬぐい、団扇(うちわ)、きものなどの文様としても登場する。
朝咲いてすぐにしぼんでしまう朝顔は、一朝一期の花だから美しいととるか、はかなさや無常を感じて忌避するかの違いだが、人によってとらえ方が異なる。
朝顔の文様は、何といってもラッパ状の花が開花したところと、単純な葉の形、細く長い蔓(つる)が印象的だ。季節感がはっきりしているため、主に浴衣の柄に使われるが、夏のきものや帯にも見られる。ほかのモチーフと組み合わせるより、単独で文様化されることが多いようだ。
【きものの装いにおすすめの季節】
夏
『格と季節がひと目でわかる――きものの文様』
監修者/藤井健三
世界文化社
今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができる。きものや帯にはそれぞれ素材や文様によって格があり、着る場面に合わせて格を揃える必要がある。判断に迷う格と季節が表示され、コーディネート例も豊富に紹介している、見ているだけで楽しく役に立つ1冊。
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