町家建築ならではの、間口から縦に続く奥行きある設計が鴨川の借景の印象を一層ダイナミックに際立たせる。川のせせらぎが、すぐそこに。
2019.08.30

モダンに遊ぶ京都3

暮らすように泊まる贅沢感

葵KYOTO STAY 鴨川邸

京都の代表的な風景のひとつとして思い浮かぶのが鴨川沿い。散歩をする地元の人たちが行き交うのどかな日常の様子や、夏の風物詩である料亭などの川床席の賑わいは、いつ見ても旅情をそそられる。思いのままに過ごせる一棟貸しという特別感に加え、川床さながらのテラスでそんな風景を独占できるのがここ。古くから残る伝統的な町家建築を再生し、京都ならではの滞在を、という想いのもと、ほかにも5軒の個性ある一棟貸しの宿を市内に展開する「葵 KYOTOSTAY」の「鴨川邸」だ。

ここに流れるのは古(いにしえ)と現在(いま)が織り成す上質な時間。和室には千年の時を刻んだ寺の柱材や、平城京跡から出土した瓦がオブジェのようにしつらえられる一方で、リビングではカッシーナのソファなどモダンな家具類で寛げる。築100 年以上の町家の風格は随所に残しながら、例えばバスルームやアメニティなどはあくまで機能的で快適に。現代の旅人のニーズに軽やかに寄り添う。


季節の花が生けられているのは、弥生時代の土器。一見、伝統的な床の間のしつらいにも、こだわりの骨董コレクションが活かされる。

葵KYOTO STAY 鴨川邸
https://www.kyoto-stay.jp/en/

Le Machiya 壬生


ダイニングルームは、柔らかい光が満ちる空間。自分の家にいるように、まどろむひとときを。

二両編成の路面電車・通称“嵐電” がガタゴトと通り過ぎる音が聞こえてくる。まるで、自分はずっとここに暮らしているような感覚に陥るほど、ローカルな京都がすぐそばにある。日本人にとってさえ今や懐かしく感じられる、1950~60 年代に建てられた、すべて和室の一軒家。昔のままを留める味わいある建具に、北欧スタイルの家具が温かみを添える。夜は、2 階に昔ながらの畳に布団を敷くスタイルで。バスルーム周りはフルリノベーションされ、簡易キッチンもあり、快適に京都でのロングステイを満喫できる。徒歩数分の嵐電・西大路三条駅からは、四条エリアの繁華街や、世界遺産の名刹・仁和寺、映画村のある太秦(うずまさ)や景勝地・嵐山など人気観光地へ一本のアクセス。

そして京都に滞在するならば、やはりもっとディープに体験しつくしたい。コンシェルジュに、和菓子店での菓子作り体験や、京漬物の老舗などへの体験ツアーをコーディネートしてもらおう。また、奈良や大阪など周辺の関西エリアへのデイトリップに気軽に繰り出せるのも、長期滞在の拠点があればこそ。ここは京都を、そして日本をもっと発見するベースになるに違いない。


日本家屋の古き良き佇まい。秋は玄関脇のモミジが真っ赤になり、京都の季節をささやかに切り取る。

Le Machiya Mibu
http://lemachiya.com/

Jam Jar Lounge & Inn

ジャズの調べに身を委ね、陽気なオーナーやほかのゲストとのおしゃべりを楽しんだり、エスプレッソ片手にカウンターで読書に耽ったり。旅の空の下、こんな心地よいひとときがあってもいい。ここは、西陣織の機屋(はたや)だった築110年の京町家が生まれ変わったゲストハウス。土壁や格子窓をそのまま残した1 階のカフェラウンジは、オーストラリアのヴィンテージ家具、アールデコの照明やステンドグラスが調和する居心地抜群の空間だ。一方、1階と2階に一部屋ずつある客室は、いずれも凜とした落ち着きある雰囲気の和室。襖に張られた漆和紙の色のコントラストなど、随所に美意識が光る。建物の裏手には客室への専用エントランスもありプライベート感が保たれるほか、2 階の客室はミニキッチンつきで、自分だけの町家ベースで暮らすように自由な滞在が実現する。


1 階の客室は、京町家ならではの坪庭のガーデンビュー付き。

Jam Jar Lounge & Inn
https://jamjarjapan.com/