伝統
2020.07.08

きものの文様―11
【雲(くも)】空に漂う千変万化の吉祥文様

古来、日本のきものに施されてきた美しい「文様」。そこからは季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、時代ごとの社会のしきたりを読み解くことができる。夏にちなんだ文様を中心に、きものの装いで通年楽しめるものや格の高い文様まで、文様のいわれやコーディネート例を、毎週お届けする。

今週は、自然や動植物の縁起物を描いた吉祥文様を3種ご紹介しよう。

雲は雨や雪を降らせ、動きによってその日の天候を左右する大きな力を持っている。昔の人々はこうした不思議な雲に、神や霊が宿っていると考えた。古代中国では、雲から万物が形成されたとされ、空に漂う雲を吉祥とみなした。


写真は長襦袢に施された雲取り文様。

日本でも飛鳥時代にこうした中国の影響を受け、雲はさまざまな意匠に使われた。時代が移るにつれ、雲をめでたい柄として図案化することは少なくなったが、雲の形は現代もきものや帯に生きている。

 

瑞雲(ずいうん)
瑞雲は雲を文様化したもので、吉祥柄として用いるときの呼称。雲に吉凶の意味を託すことは古くから行われ、たなびく雲の形の変化によって、さまざまな名称で呼ばれた。


雲取り(くもどり)
雲がふわふわとたなびいている様子を輪郭線や色で表現したもので、周囲や雲の中に草花などをあしらったものも雲取りと呼ぶ。


青空に綿菓子のように浮かぶ白い雲をふんわりと描いたきものは、夏用の小紋。くっきりと鮮やかな燕(つばめ)文様の帯を合わせて。

 

【きものの装いにおすすめの季節】
通年

 

『格と季節がひと目でわかる――きものの文様』

監修者/藤井健三
世界文化社

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができる。きものや帯にはそれぞれ素材や文様によって格があり、着る場面に合わせて格を揃える必要がある。判断に迷う格と季節が表示され、コーディネート例も豊富に紹介している、見ているだけで楽しく役に立つ1冊。

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