Kimono patterns of summer flowers
伝統
2020.08.05

きものの文様―20
【夏の植物】草花の文様で涼やかに装う

古来、日本のきものに施されてきた美しい「文様」。そこからは季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、時代ごとの社会のしきたりを読み解くことができる。夏にちなんだ文様を中心に、きものの装いで通年楽しめるものや格の高い文様まで、文様のいわれやコーディネート例を、毎週お届けする。

今週は、夏の草花と自然の文様をご紹介しよう。


葦の文様

四季のはっきりしている日本では、古くから四季折々に咲く植物や草木がきものや帯の文様に取り入れられてきた。大正以降は西洋の花も加わって、きものや帯の文様は一層華やかさを増す。

夏にぴったりな植物の文様、4種をお見せする。

 

(あし)
水辺に生息し、芒(すすき)に似た植物である葦の文様は、古くから親しまれてきた。音が「悪し」に通ずることから、別名を「葭(よし)」という。千鳥や波、舟<記事はこちら>、白鷺(さぎ)などとともに文様化されている。葦と雁(かり)を合わせた葦雁(あしかり)文も。

【きものの装いにおすすめの季節】

 

酸漿(ほおずき)
毎年初夏には日本各地でほおずき市が開かれ、お盆には枝つきの酸漿の果実を死者の霊を導く提灯(ちょうちん)に見立てて飾る。写真の夏帯は、赤い皮が網目状に透けて、赤い実が見える様子を描いたもの。

【きものの装いにおすすめの季節】
夏、秋

 

百合(ゆり)
キリスト教では白百合を聖花として、聖母マリアに捧げる習慣がある。日本でも『古事記』などに百合にまつわる物語が見られ、『万葉集』にも多く詠まれてきた。現在もきものや帯の文様として、写実的に描いたものが目立つ。

【きものの装いにおすすめの季節】

 

芭蕉(ばしょう)
沖縄地方の一部で栽培されている糸芭蕉は、高さ4mにもなる。形のよい大きな葉が好まれて、紅型や夏帯などの文様に使われる。また芭蕉布(ばしょうふ)とは、糸芭蕉の繊維で織った夏の織物を指す。

【きものの装いにおすすめの季節】

 

『格と季節がひと目でわかる――きものの文様』

監修者/藤井健三
世界文化社

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができる。きものや帯にはそれぞれ素材や文様によって格があり、着る場面に合わせて格を揃える必要がある。判断に迷う格と季節が表示され、コーディネート例も豊富に紹介している、見ているだけで楽しく役に立つ1冊。

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