2020.09.14

玉露の旨味を凝縮した1本

「緑茶」とひと口にいっても煎茶や抹茶にほうじ茶など、いくつか種類があるが、コクのある味わいと、抽出したときの美しい色合いで、高級品として強い人気を誇るのが玉露。新芽の段階から遮光栽培をして、旨味を凝縮させた緑茶だ。その名産地が福岡県八女市。八女市は、全国のお茶を審査する「全国茶品評会」の玉露の産地部門にて、20年連続で1位を獲得するという快挙を成し遂げている。決して生産量は多くはないが、なぜ日本一の玉露を作り続けられるのか。この疑問に、八女市市役所職員で、技術指導者でもある椎窓孝雄(しいまど・たかお)さんが答えてくれた。

「八女の玉露が品評会で評価されるまでには、さまざまな苦労と努力がありました」と椎窓さんは話す。「玉露の生産で全国一といわれる京都の生産者さんの元に、八女のお茶の葉を空輸便で送り、お茶の製造工程で一番重要な、茶葉の揉み方を教わったこともありました。普通、他県の生産者に伝統の技術を伝授することなどありませんが、我々の熱意が通じて、そのコツを教えてもらうことができました」。


手摘みし、蒸した茶葉を揉む際の手触りが重要。熟練の技が必要とされる。

さらに、新品種の導入にも挑戦したという。「鮮やかな緑色が特徴で、苦味が少なく、甘みと旨味のコクが強い『さえみどり』という品種を30年ほど前に取り入れました。味は抜群においしいのですが、寒さに弱く、とにかく育てるのが難しい品種です。生産量を確保するのが大変で、一定量を収穫できるのが、4年に1度くらいのときもありました」。

「そしてなにより、八女の玉露の品質が高いのは、厳しい栽培条件が課せられる『伝統本玉露』の生産にこだわっているからでしょう」。伝統本玉露に認定されるには、肥培管理の徹底や、新芽を育てるとき遮光のために被せる被覆資材を、昔ながらの稲わらにすることや、茶葉の摘採(てきさい)は手間も時間もかかる手摘みに限るなど、いくつかの規定をクリアする必要がある。「こうした丁寧な作業と努力の積み重ねで、生産量は少ないですが、見た目も、味も香りも最高の玉露が作れるのです」。


一枚、一枚丁寧に茶葉を手摘みするため、ベテランでも一日に10~12kgほどしか収穫できない。そのうち、茶葉になるのはほんの15%ほど。

こだわりが詰まった八女の伝統本玉露だが、いちばん美味しい飲み方について、八女市でお茶の販売店を営む日本茶鑑定士の木屋康彦(きや・やすひこ)さんはこう話す。「おすすめは、『氷出し』という、溶けた氷の雫でゆっくりとお茶を淹れる方法です。低温で抽出することで、玉露の渋みを減らし、旨味を最大限ひき立てることができるんです。八女の玉露はもともと甘味が強いですが、この方法で抽出することで、より濃厚な旨味と甘味を引き出せます」。

このベストな抽出方法で淹れた八女伝統本玉露を、もっと多くの人に簡単に飲んでもらいたい、そんな思いからついに氷出しの玉露の味を凝縮したボトリングティーの販売が決定した。


ワインボトルを思わせるスタイリッシュな瓶に詰められた「ボトリングティー八女伝統本玉露 特別抽出茶」(12,000円)。1本180ml入り。

全国茶品評会の中で選りすぐった最高峰の茶葉「Superlative」の旨味や栄養分をぎゅっと凝縮させたボトリングティーは、25~30mlの少量をリキュールグラスなどにいれ、ウィスキーを飲むように、ゆっくり味わうのがおすすめだそうだ。「濃厚な味わいのこのお茶のお供には、和菓子はもちろんだが、ハイ・カカオのチョコやブルーチーズなど、旨味と香りの強いものも合います」と、木屋さん。今後、海外のレストランにも設置を目指すというボトリングティー。ほっと一息つきたいときや、何か特別なお食事のシーンなど、お酒を嗜むように、最高品質の玉露を楽しんでみてはいかがだろうか。

 

ボトリングティー八女伝統本玉露【特別抽出茶】
公式オンラインストア:yame-teashop.com
8月1日~11月15日まで、公式オンラインにて予約を受付中。
納品は12月末を予定。
お問い合わせ先:0943-22-3000(八女伝統本玉露推進協議会)