Kimono patterns of seigaiha
伝統
2020.07.31

きものの文様―18
【青海波(せいがいは)】水面の波頭を表現した文様

古来、日本のきものに施されてきた美しい「文様」。そこからは季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、時代ごとの社会のしきたりを読み解くことができる。夏にちなんだ文様を中心に、きものの装いで通年楽しめるものや格の高い文様まで、文様のいわれやコーディネート例を、毎週お届けする。

今週は水にまつわる文様をご紹介しよう。

水面に見える波頭を幾何学的にとらえて文様化した青海波は、古くから用いられてきた文様のひとつ。

日本の古典音楽、雅楽の演目『青海波』の装束に用いられていたことから、この名がついたとされている。『源氏物語』の紅葉賀(もみじのが)の帖にも、源氏が「青海波」を舞う情景が描かれている。

江戸時代の中期になって、青海勘七(せいかいかんしち)という塗師(ぬし)が特殊な刷毛で青海波を巧みに描いたことから、この文様が広がった。


青海波文
(せいがいはもん)
青海波は日本だけでなく、エジプトやペルシャをはじめ、世界各地に見られる文様だ。同心円が扇状に重なり合った幾何文様の一種でもある。古くは人物埴輪の衣装、陶器や蒔絵、舞楽の衣装、能装束、小袖にも用いられた。

青海波の文様には基本的なもの以外に、松竹梅で青海波を形づくったものなど、バリエーションは豊富だ。

 

破れ青海波(やぶれせいがいは)
青海波が全面に敷き詰められているのではなく、ところどころ模様が途切れて、破れ文様になっているものをいう。写真は長襦袢の文様。

 

【きものの装いにおすすめの季節】
通年

 

『格と季節がひと目でわかる――きものの文様』

監修者/藤井健三
世界文化社

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができる。きものや帯にはそれぞれ素材や文様によって格があり、着る場面に合わせて格を揃える必要がある。判断に迷う格と季節が表示され、コーディネート例も豊富に紹介している、見ているだけで楽しく役に立つ1冊。

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