伝統
2020.06.19

きものの文様 ―3
【瓜(うり)】フォルムの面白さを活かした縁起もの

古来、日本のきものに施されてきた美しい「文様」。そこからは季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、時代ごとの社会のしきたりを読み解くことができる。夏にちなんだ文様を中心に、きものの装いで通年楽しめるものや格の高い文様まで、文様のいわれやコーディネート例を、毎週お届けする。

今週は、グラフィカルでユニークな和の文様世界の入り口へご案内しよう。


6つの瓢箪「むひょう」を「無病」の語呂合わせにして、無病息災を願った文様。

南瓜(かぼちゃ)、糸瓜(へちま)、胡瓜(きゅうり)、瓢箪(ひょうたん)、西瓜(すいか)、冬瓜(とうがん)、夕顔(ゆうがお)などのウリ科の植物を文様化したものを、一般的に瓜文という。

これらの植物は形のおもしろさから図案化されやすく、葉や蔓(つる)とともに、さまざまに表現されてきた。能装束や小袖にも用いられ、江戸時代の狂言装束に、夕顔と片輪車を大胆に染め出したものが見られる。

 

瓜文(うりもん)
ウリ科の野菜(マクワウリ)をモチーフにして図案化した瓜文は、江戸の庶民にも好まれ、浴衣や手ぬぐいの文様としても使われた。現代は浴衣のほか、きものや帯の意匠に取り入れられている。

通常は組み合わせることのない瓜と貝を並べて、「うりかい」と読ませる文様(上の写真)は、商売を大切にする商家の心意気が伝わってくる。こうした遊び心のある文様にも、ユニークな瓜の形が生きている。縁起ものなので、新年の集まりなどお祝いの席にも。

 

瓢箪(ひょうたん)
瓢箪はウリ科の蔓性一年草で、夕顔の変種。果実が成熟したものは、果皮が堅くなるので、徳利(とっくり)などの容器や装飾品に利用される。実の中央がくびれた形のおもしろさから、蔓や葉とともに文様化された。

写真のように、竹垣にからんで蔓を伸ばす瓢箪は、実の中の種などを取って乾かしたものと区別するために、生(な)り瓢(ひさご)とも呼ばれる。

 

上の写真の右は長襦袢の生地に瓢箪文を散らしたもので、形のユニークな実だけを用いたもの。中身をくりぬいて乾燥させた実は、「ふくべ」や「ひさご」ともいう。また、小形で多数の実をつける千生(せんな)り瓢箪は、戦国時代の武将、豊臣秀吉の馬印として有名。

【きものの装いにおすすめの季節】
夏、秋、通年

 

『格と季節がひと目でわかる――きものの文様』

監修者/藤井健三
世界文化社

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができる。きものや帯にはそれぞれ素材や文様によって格があり、着る場面に合わせて格を揃える必要がある。判断に迷う格と季節が表示され、コーディネート例も豊富に紹介している、見ているだけで楽しく役に立つ1冊。

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