伝統
2021.01.14

きものの文様―27
【笹(ささ)】古来めでたいとされてきた植物文様

古来、日本のきものに施されてきた美しい「文様」。そこからは季節の移ろいを敏感に取り入れてきた日本人の感性や、時代ごとの社会のしきたりを読み解くことができる。きものの装いで通年楽しめるものや格の高い文様まで、文様のいわれやコーディネート例を、毎週お届けする。

今週から3週にわたり、四季折々を映す文様をご紹介しよう。


雪持ち笹文様を織りで表現したもの。写真は、雪持ち笹と雪の結晶がちりばめられた帯。

笹は、竹と同じイネ科の植物だが、竹ほど背は高くならず、茎もかなり細いのが特徴。竹と同様、めでたい文様として、古くから礼装用のきものや帯に使われている。

笹文(ささもん)
笹の種類は竹よりも多いといわれ、竹に比べて背が低く茎が細く、青々と繁る葉に特徴がある。文様としてはその印象的な葉を図案化したものが主流になっている。


雪持ち笹
(ゆきもちざさ)

笹の上に雪が積もった様子を文様化したもので、笹文様の代表ともいえる。雪の積もり具合はさまざまだが、しなだれて積雪に耐え、雪解けとともに葉を奮い立たせて甦(よみがえ)る様子が、強靭(きょうじん)な精神にたとえられ、この文様が考え出されたといわれる。

 

笹蔓(ささづる)


柔らかく気品のある小紋。笹蔓文様のきものに、宝尽くし文様<記事はこちら>の織り帯を合わせて装いの格を上げる。

中国の明(みん)から伝えられたとされる名物裂(めいぶつぎれ)<記事はこちら>のひとつで、松毬(まつかさ)と笹の葉、小花を組み合わせた文様だ。やや楕円形の松毬、6弁の小花、蔓性の葉が規則正しく表現されている。小紋柄のきものや帯などに広く用いられる。

【きものの装いにおすすめの季節】
通年、正月、春

 

『格と季節がひと目でわかる――きものの文様』

監修者/藤井健三
世界文化社

今回ご紹介した文様を含め、300以上もの文様を掲載。文様の歴史や意味が豊富な写真によってよくわかり、体系的に勉強することができる。きものや帯にはそれぞれ素材や文様によって格があり、着る場面に合わせて格を揃える必要がある。判断に迷う格と季節が表示され、コーディネート例も豊富に紹介している、見ているだけで楽しく役に立つ1冊。

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